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森林は、木材生産機能のほかに水源かん養機能、山地災害防止機能、生活環境保全機能、保健文化機能などさまざまな公益的機能を持っています。水源かん養機能はその中でも大変重要な機能として位置づけられています。水源かん養機能には、洪水緩和、渇水緩和、水質浄化の3つの機能が含まれています。
洪水緩和と渇水緩和の機能とは、森林が水の流出量を調整することにより、渇水や洪水を防止・緩和するとともに、人々が水を利用する機会を増加させる機能です。
森の土が水をしみ込ませる力は、裸地の20倍もあります。森の土はまさ地などに比べ、土の中に隙間が多いので、水が染み込みやすく、水をたくわえる力が優れています。
そのため、森林に降った雨水は土の中で貯えられ、ゆっくり浸透し、徐々に河川等に送り出すため、大雨の時でも一度に水を放出することなく、また、長く雨が降らない時でも土中で貯えられた水が、ゆっくり河川等に流れ出ます。この働きは、ダムの機能に似ているところから、森林は「緑のダム」とも呼ばれています。
水質浄化の機能とは、雨水が森林の土の中を通過する間に、ろ過したり、樹木や植物の根が、水に溶けているリン・窒素等の川の汚れの原因となるような化学物質を吸い取ったりすることにより、水質を一定に調整し、良質化・安定化する機能です。
また、土のすき間や岩の割れ目を通るうちに、適度なミネラルを溶け込ませることにより、おいしい水をつくることになります。
太田川源流の森を水源かん養機能が十分発揮できる森林として育成していくためには、様々な育林作業が必要です。具体的には、木があまりない土地への植林や、人工林の適切な保育(下刈り・除伐・間伐・枝打ち)といった作業です。
(1) 地ごしらえ…植えつけ作業が容易にできるように、障害となる雑草木や伐採のときに残された枝や葉などを取り除く作業です。
(2) 植林 ……… 苗木を植えつける作業です。
(3) 下刈り …… 苗木を植えつけてから、木の成長によって樹冠(枝・葉の茂っている部分)が雑草木の成長を抑えられるようになるまで、雑草木を刈り払う作業です。苗木に良く陽光があたるようにすることと、雑草木による土壌中の養分・水分の収奪を防ぐ効果があります。
(4) 除伐 ……… 植林した木の成長の妨げになっている、生命力が強く成長の早い雑木を伐り除く作業です。
(5) 枝打ち …… 森の中に陽光が入りやすくなるよう、枝を切り落とす作業です。森の中に陽光が入りこむことにより、下草が茂り、雨による土の流出を防ぎます。
(6) 間伐 ……… 植林した木が成長し枝が重なりあい、お互いの成長を邪魔するようになる前に、適度に伐採する作業です。残った木の成長を促すとともに、「枝打ち」と同様に、森の中に陽光が入るようになり、森の土壌を保全する効果があります。